河瀬です。
先日、豊田市文化振興財団より郵便物が送られて来ました。
中を開けてみると豊田市ジュニアオーケストラのメンバー募集でした。
興味がある方はオーディションを受けてみてはいかがでしょう。
と、言いたいのですが。
例年の課題曲から考えると現時点でオーディションを受ける事が出来る方は残念ながらいらっしゃらないと思います。
オーディション課題曲のレベルが高いのです。
ジュニアオーケストラと言っても子ども用に簡単にアレンジしてあるものではなく原曲の楽譜を弾きます。
演奏会のメインの曲はヴァイオリンの場合短くとも１０数ページはあるでしょう。
一度演奏会に行かれると分かると思いますが、こんな難しい曲を子どもが演奏しているのか！と驚かれると思います。
実は過去に別の教室でオーディションを希望された生徒さんがいたのですが、僕は直ぐに他の先生を紹介しました。
間違いなく僕のレッスンではそのレベルに到達するのが遅くなると思ったからです。
その生徒さんは数年後、無時合格されて演奏会でご活躍されていたのを観て僕もとても嬉しく思い安心しました。
後日その生徒さんをお任せした先生とお話しをした際、相当厳しいレッスンをされたと仰っていました。
一般的なレッスンからすると僕のレッスンは激甘だと思っているので他の先生の仰る厳しいレッスンというと…
よく保護者のお母様にどのようなレッスンを希望されるか伺うと「優しいレッスン」「楽しいレッスン」というキーワードが出てきます。その中には自分が習っていた時に恐かったからというお話もよく聞きます。
僕も過度な恐怖しか感じないレッスンは教育ではなく調教（言葉が悪いのですが）だとさえ思います。
もしそういったレッスンによって音楽が嫌いになってしまったら…
僕にとってこれ以上恐い事はありません。
そういう意味では「優しい」というより「安全な」という意識でレッスンをしています。
もちろん何でもOKなレッスンはしませんが。
しかし、安全な優しいレッスンにも心配な事があります。
長い年月通っていただいた結果あまり成果が出ていないと思われる事です。
あんまり上達しなかった。〇〇先生の〇〇ちゃんはもっと難しい曲を弾いている。
こう感じられてしまうと「優しい先生」は「指導力のない先生」という疑いが出てきます。
おそらく、厳しい（細かく丁寧な）レッスンをされている先生の意識としてはこちらの心配をされているのだと思います。
上達しないという事は通う意味が無いと考えられてしまうからです。
ですが、子どもの頃、レッスンに通っていたけど途中でやめてしまった、という方はお考え下さい。
今、何曲弾けますか？
今も日常的に弾かれる方は何曲も弾ける事と思いますが、そうでない方は…
中には習っていたけど楽譜も読めるか心配、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
音楽以外の経験でも当てはまりますが、高校で勉強した数学、今解けますか？
出来ていた事は出来なくなる、覚えた事は忘れてしまうのです。
では、演奏技術を失ってしまった場合、一体何が残るのでしょう。
そこに残る価値をお考えになれば必然的にその時の感情とこれからの感情が優先されるのではないでしょうか。
そもそも学習塾やスポーツではなく音楽を習う個の理由をお考えになれば何が弾けるかという事よりどう感じるかが重要なのではないでしょうか。
感情は課題曲の難易度や演奏レベルと直接関係しません。
僕は曲芸を教えている訳ではないので優先すべきは消え去る技術より残る感情です。
ほとんどの方が進学や受験などで中学生頃にはお辞めになります。
そこから大学生や大人になって再開する為には技術ではなく本人の感情が必要です。
弾けるから弾くのではなく弾きたいから弾くのです。
子どもの頃から始めたとして、音楽が、楽器を弾く事が、一生好きでいられたなら何十年という音楽生活になります。
成長途中の不安定な子どもの心理に危険な賭けをすべき理由は何処にもありません。
せっかくヴァイオリンを習っているのだから最終的にはオーケストラで仲間達と素晴らしい曲を弾いて素晴らしい気持ちになって素晴らしい経験をして欲しいという思いがありますが、何が優先かを考えた結果所謂「優しいレッスン」になってしまいます。
ですが、何が弾きたいかが本人の意思であるならば厳しいレッスンをするべきです。
その際、僕では力不足の場合優秀な先生をご紹介致します。
最後に誤解が無いように、厳しいレッスンをされている先生は皆様普段はとても優しい方が多いので、先生の人格でレッスンしている訳ではなく深いお考えあっての事ですが、僕が優しいレッスンをしているのは先に述べた諸々の理由よりも僕が軟弱者だからという理由が多分に影響しているような気がする点が残念であります。
