お疲れ様です河瀬です。
徐々に春らしくなって参りましたね。
新年度に向けてお問い合わせ、ご入会のご予約が増えてきて嬉しい限りです。
河瀬クラスは月のレッスン回数が任意のため、ご入会の際にレッスン回数についてのご相談をいただくのですが、お子様、未経験の方には月三回以上をお勧めしております。
これはレッスンで習得した事が定着する前に忘れてしまう「学習の消去」を防ぐためで、レッスンの期間が空くと、どうしても復習が多くなってしまいレッスンが進まなくなってしまうからです。
では、出来る限り間隔を空けずにほぼ毎日のように(河瀬クラスは週に三回の開講ですが)通えば週一回のレッスンより進むのでは?と思われるかもしれません。
前振りが長くなりましたが、今回はそんなレッスン回数と学習のお話。
レッスン回数と学習の成果は単純に正比例し続けるのでしょうか?
行動心理学の究極の教科書と言われる「Learning and Behavior(James E. Mazur)」の中から「運動技能の学習(13章)」にそのヒントが書かれていました。
前後の文脈や関連理論を説明すると300ページ程あるのでザックリとお伝えしますので詳細は本にてご確認下さい。
多くの運動技能には運動の結果についての成否、質等の情報フィードバック(Knowledge of results :KR)という概念があり、KRがない場合ではその行動の成否、質が分からないため、学習の質は当然下がります。
ところが、ある実験においてKRを実験中全施行において受けた群と67%の施行だけ受けた群で二日後にKRが与えられない条件でのテストを行った結果、67%受けた群の方が良い成績を納めたのです。
更に、KRを受ける時間を即時で与えられた群と、8秒間の遅延の後与えられた群で、後日先程の実験と同様にKRを与えないテストを行った結果、遅延性KRを与えられた群の方が良い成績を納めたのです。
このような結果の理由として、KRは新しい学習の獲得期では高いパフォーマンスを示すがその結果はKRに依存しており、適度にKRを受けた群と遅延性KRを受けた群は、KRのない施行、時間に自分自身の感性感覚で行動の成否や質を判断する能力を養っていたためであるとされています。
実はこのKRに関する実験と考察について、私は学生時代に同様の予想はついておりました。
私が学生時代に韓国の留学生と、子ども時代のレッスンの話をした際、彼の通っていたピアノ教室はほぼ毎日通って個室の練習室に籠り、ほぼ時間無制限で練習をし、課題が弾けるようになったり分からない所を質問する際に講師をボタンで呼ぶことが出来るというシステムだったそうです。
日本でオーソドックスな週一回30〜40分のレッスンに比べると桁違いのKRを受ける訳ですが、彼と私のピアノの成績は特別変わりはなく、世界的に見てもそのようなシステムを採用している例が見られないということは、やはりKRの回数だけでは学習は進まないという事だと思います。
まあ、彼と私の成績に関していえば二人とも不真面目だったという共通の仲介変数が多いにありますが…
元気かなぁ、ミンホ…
最初の問いに戻りましょう。
レッスン回数と学習の成果は正比例するか。
学習初期の段階に限り答えはYESです。
ただし、その後は自分の演奏に対して「正しかったか」という自分自身の判断能力を養っていかないとご自宅での練習は闇雲なものとなり、レッスン回数や練習量に対して学習の成果は正比例しなくなる可能性があります。
更に、自分の演奏に対する自分自身の判断を間違えると、練習量に対して反比例する可能性すらあります。
本来レッスンに通っていただく意味はこの反比例を防ぎ、正比例に導くためであります。
小学生以上であればこの自分自身の正しい判断も少しずつ出来るようになりますが、未就学の小さなお子様にはやはり難しいため、自分自身で正しく判断するための最も基礎的な「音を能動的に聴く」という練習をします。
以前のブログでも紹介しましたが、僕のレッスンでは「音を能動的に聴く」ためのアイテムをたくさん使用します。
やはり全てはここからであります。
長文、最後までお読みいただきありがとうございました。