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初めての楽器選び〜プロレタリアより〜

お世話になっております。河瀬です。

慣れない映像に呻吟しており長らく文字を打たずにおりました。

 

今年もご新規の生徒様が増える時期となりましたので、楽器の事を少々。

 

ご経験の無い方がバイオリンをご購入される際に、何処で、どの様な、幾らくらいのものを、というご質問を良く頂きますので今回はその辺りのお話を致します。

 

Q1,「何処で」

このご質問の回答はまず大きく二択となり、実店舗orネット販売、となります。

Bestな選択としては実店舗、可能であれば弦楽器の専門店をお勧め致します。

大きな理由としては、本来楽器は非常に精巧、繊細なものでありますので、現物を販売現場で個体に合わせた最終調整を行った状態で販売するものですが、弦楽器の工房の職人さんのお話では、ネット販売の場合、運搬の振動、衝撃に耐えうる様に、各部をキツく嵌めた単に「ズレない」セッティングになっており、楽器の鳴りを考慮した調整では無いため、弾きやすさ、音の良さの点で劣ります。購入後に不具合や不満点を現物の運搬でやり取りする以上この点は避けられないデメリットとなります。

可能な限り安く、実店舗に行く時間等を節約したいというお考え、お気持ちも分かりますが、私の経験上ではネットでご購入されたものをお持ち頂いた楽器には100%何かしらの問題点がありました。

更に、楽器のセッティング(各部の微調整)、というものは専門の職人さんの技術、知識が必要になるため、実店舗の中でも弦楽器(バイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)の専門店が、職人さんと直接やり取り出来る点では望ましいでしょう。

実はギターやその他の多くの楽器を扱う大手楽器店の店員さんの中には、弦楽器の専門的な知識をお持ちの方が非常に少なく、多くはお客様のご希望を別の修理、メンテナンス機関に丸投げするだけなので、その場で何が原因でどうすれば良いという事が分からない事がよく有り、過去には不適切な対処をされた方もいらっしゃいましたので、長く使用する事をお考えの楽器であれば弦楽器の専門店でのご購入をお勧め致します。

但し、初心者の方の場合、楽器のセッティングの良し悪し、が分からないため、音が出ていれば問題とされないのであまり気にされる方が多くないのも事実かもしれません。

 

Q2,Q3,「どの様なものを」「幾らくらいのものを」

値段は一番気になる点かと思いますが、多くの物の値段同様、値段だけでは申し上げる事が出来ないため、先ず、何の様なものをという条件を満たしているものという順になります。

条件としては、道具としての機能に不備、不具合が無いもの、と考えます。

バイオリンの場合の具体的な不備、不具合とは、適切な奏法でも発音が難しい、弦が押さえにくい、等の操作性に難がある。消耗交換部品等が交換出来ず、使い捨てを前提としているもの。以上のような、楽器の音の良し悪し、というより道具として問題点が有るもの以外となります。

そのようなものは単に不良品なのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、過去に一万円程の楽器を購入されたという方に不備、不具合を購入店舗にてご相談頂くようお勧めした際、販売店からメーカー元へ送り戻し整備されたのですが、やはり改善があまり見られず再度お問合せ頂いたのですが、これ以上の整備、調整は楽器の限界ということだったためそのままの使用となりました。

恐らく音が出ているという状態であれば不良品とは扱われないのでしょう。

先述の通り、演奏経験が少ない方では適切な奏法に自信が無いため、楽器の不備、不良を判断することが難しく、自分が初心者だから良い音が上手く出ないのだと思ったまま使用されている方が多く見られます。

誰もがあの妙なる音を奏でたくて始めたのに、初心者という技術的不足に加え、更に楽器の弾きにくさというハンデを背負うのはあまりにハードモードでは無いでしょうか。

 

ではそのような問題点がある楽器以外をどのように探すか、という事を考えた際、やはりQ1,の弦楽器の専門実店舗での購入が一番間違いないという答えになります。

では現状、弦楽器の専門店は幾らくらいからの楽器を取り扱っているのか。

店舗によりますが、バイオリン、弓、ケース、といった必要最小限のセット販売として10〜20万円前後ではないかと思われます。

 

販売店としては良い楽器で芸術の真価を体感して欲しいという情熱を殺し妥協を重ね削りに削った最小限の御提案かと思いますが、私の様な小作講師の無産階級の金銭感覚からすると、気軽に始められる趣味とは言えない金額で御座います。

勿論最初から確かな良いものを使うことは大いに意味があり決して無駄では御座いませんので可能であれば可能な限りご予算は多い方が良いのですが、もっと費用を抑えたいという方が低い値段のものを探す場合どのようなデメリットがあるのかを以下でお話致します。

 

①可能な限り安価な価格(主にネット販売で多く見られる1〜3万円程のもの)

この場合値段が低くなるに連れて不具合品の確率が非常に上がりますので、1〜2万円の楽器はおもちゃだと覚悟された方が良いのですが、3万円程であれば弦楽器の専門店ではない大手楽器販売店でお探し頂くと最低限のラインはクリア出来、且つある程度まで不具合に対処してもらえると思います。

別解ですが、続けるか分からないけど実際に練習を始めてみたい、という事であれば安価なものを購入するより、楽器の貸し出しをしているお教室でレッスンを受ける、楽器店で楽器のレンタルだけをしてみる、の方が良い選択かと思います。

 

②3〜10万円

弦楽器の専門店ではない楽器店ではこの価格帯も多く取り扱っています。購入後のフォロー等信頼出来るお店であれば問題ないと思いますが、弾き易さといった操作性は、有るか無いかの悉無律ではなく、程度の問題の確率ため、個人的には少々不満があるものも稀に御座いますが、簡単な曲を弾く分には問題無いと思います。

別解としては、この価格帯であれば、弦楽器の専門店が調整、整備した中古品を購入するという手段も選択肢に入ると思います。小傷等の使用感はあるかと思いますが、使用に問題となる程度では無く、機能もある程度良い状態にされているため、新品を探すより良い場合も御座います。

 

Q1,の別解

ネット販売は基本的にお勧め出来ませんが、昨今弦楽器の専門店であってもネット販売を行なっております。

Bestな楽器の状態は望めませんが信頼出来る販売店であればある程度のリスクやアフターケア等の不便さをご承知の上であれば問題無いと思いますが、やはり値段の低さに比例して不具合率が上がる事は懸念されます。

 

※限りなく勝ち目の無いギャンブルに近い別解

「メルカリ」「ヤフオク」等の一般中古市場

お店、業者ではない一般の方も多く出品する「メルカリ」「ヤフオク」等のネットオークションで楽器を購入される方も最近はいらっしゃいます。(ご入会前、ご相談前に既にご購入されて)

私が直接見せて頂いた限りでは、現在の所100%不具合品でした。SuzukiやYAMAHAといった多く出回っているメーカーのもので、定価もそこそこのものであっても、調整、整備の状態が非常に悪く、消耗品や交換部品を相当取り替え、調整、整備しなければ真面に音が出せないものでした。

見た目綺麗なものを1〜2万円で購入される方が多いのですが、交換、整備、調整、全て行うと2万円〜かかるため、結局は、という事が多く有ります。

お気を付け頂きたいのは「メンテナンス済み」「消耗品新品交換済み」等の文言です。

弦楽器のメンテナンスとは、専門の職人さんが行う非常に精密なもなので、先ず素人が出来ることでは御座いません。その様なメンテナンスに出した場合、販売値段は当然1〜2万円では無い筈です。

恐らく出品者の方の「メンテナンス済み」とは、「綺麗に拭いた」ということなのかもしれません。

弦楽器の工房の方のお話しでは、オークションを見ているのはほぼ業者(弦楽器の専門)で、部品交換の費用や自社で整備、調整をして、売れる見込みがある値段のものを落としていくわけなので、残っている場合当然その価値が無いか不明な部分のリスクが大きいという事でしょう。

「消耗品新品交換済み」とされていた楽器に張ってあった弦は非常に安価な弦で、弦というよりほぼ針金の様なもので真面に音が出ないものでした。具体的な商品名が無い場合、ほぼ自費で改めて交換が必要と思った方が良いかもしれません。

その他の消耗品、弓の毛、駒、魂柱等は素人では交換出来ないので、されていないか新品を適当に嵌めた状態(本来部品を個体の形に合わせて削る必要が御座います)である可能性が非常に高いと思います。

もし、どうしてもというものが御座いましたら、商品名の定価が把握出来るもので且つ信頼できる情報、プラス3万円程購入後自費で手を入れても元が取れる様であれば問題ないと思いますが、見た目綺麗であっても割れ、剥がれ等大掛かりな修理が必要な場合も御座いますので、返品が不可の場合諦めた方が良いと思います。

 

やはり長文になりましたが、楽器は人生を共にする大事なパートナー。

お時間頂いた分に見合うだけの有益な情報であれば幸いに存じます。

 

現在の所レッスンの空き枠は僅かですが、今年も多くのご入会をお待ちしております。

岡崎市バイオリン教室
岡崎市バイオリン教室